FILMFEST MUENCHEN 2025 受賞コメント
CineRebels Awardは、主要パートナーであるAudiの協賛により、賞金1万5000ユーロが授与されます。フォーマットにこだわり、映画に冒険を求める人々、そして映画ファンのためのプラットフォームです。今年の審査員は、アンナ・ヒントス、クレメンス・シック、ダッシャ・ダウエンハウアーの3名で構成され、真田宗仁郎監督作品『OKAMOTO MANTA』が選出されました。
「シネレベルズ審査員にご招待いただき、深く感謝し、光栄に存じます。3日間で約30時間におよぶ映画を鑑賞できたことは、濃密でありながらもやりがいのある体験でした。私たちが出会った映画は、大胆不敵で、映画業界の慣習に果敢に挑戦し、形式と内容の限界を押し広げるものでした。選考作品の中には、まさに珠玉の作品がいくつもありました。それは、あえて脆さを露わにし、リスクを負い、そして唯一無二の芸術的ビジョンを貫いた、まさに芸術作品と言えるでしょう。
受賞作品として選んだこの作品は、最初の瞬間から私たちを魅了する作家の芸術的な声によって創り出された魅惑的な世界へと誘います。まるで千もの素晴らしいアイデアが毎瞬炸裂しているかのような作品です。斬新で革新的なものを生み出すのは難しいことですが、この作品では、その極めて独特なDNAを最初から感じることができます。
この映画は、時に数字とルールという奇妙な世界に囚われてしまう主人公に、優しいアプローチをしています。弱々しく見えて、実は驚くほど強い主人公。観る者は恋に落ち、笑わずに笑ってしまうような主人公です。
この映画は、弱さによって暴力の世界に打ち勝つ方法、ルールを知らずに生き抜く方法を教えてくれる。この映画は、チーズスティックとコーラが完璧な食事だとさえ思わせる。主人公は一見無防備に見えるが、この世界の残酷さは彼には跳ね返る。なぜなら、彼は世界の教義を受け入れようとしないからだ。いや、教義さえ知らないのだ。この映画は、私たちが世界をどのように見ているかをただ思い込むのではなく、目の前の相手にとって世界がどのように見えているのかをもっと自問自答すれば、どれほど素晴らしい世界が待っているかを教えてくれる。
この映画は、面白く、悲しく、美しく、シュールでありながら、同時にリアルでもある。古典的なヤクザ映画を、深く人間的で慈悲深い方法で独自の解釈で表現している。人生、愛、そして芸術において、脆さを露わにする反抗的な行為が必要だということを、この映画は私たちに思い出させてくれる。なぜなら、その脆さの中にこそ真の勇気があるからだ。
私たちは、この見事な長編デビューを果たした映画の異端児に畏敬の念を抱いており、この賞が、私たち全員がファンとなったこの日本のオーディオビジュアル・パンクロッカーを支援するものとなることを願っています。」
FILMFEST MUENCHEN CINEREBELS AWARD 審査員
制作陣が決まり次は役者を募集するということで、真田はスタッフと共に各事務所に連絡をした。大体50通くらいの応募があればいいなと思いきや、次の日PCを開いてびっくり。300通以上の応募があったのだった。そして瞬く間に、500、700、そして最終的に900名以上のオーディション参加が決まり、返信の対応がパンクしてしまった。
スタッフを増員して対応し、真田の意向で書類審査を通過した役者との全員面談(200名以上)が行われた。日本のオーディションにおいて役者は脚本の一部を渡されるのが通例である、しかし岡本万太は面接の段階で脚本の全編が読める。脚本の全貌を明かさないのは盗作の危険性がある事が大きな理由の一つであるが、真田は『岡本万太』を撮れるのは自分だけだと確信していたが故に脚本の全編をなんの躊躇いも無く公開した。オーディションに参加した役者は驚いていた。真田の狙いはキャストと脚本についてディスカッションをする時間を増やすこと、また各役者の脚本の解釈のパターンを知ること、そして役者の脚本へのより深い理解を促すことであった。その結果キャストの選定で半年も費やしたのであった。
満を持して撮影が始まったのは2022年の7月。戦いの現場はスタッフのTシャツが汗で絞れるほどの猛暑、暑さによりカメラが故障する。真田が万太状態から戻ってこない。劇用車のパトカーのランプが付かないトラブル、猛暑の40°が涼しく感じるほどの室内撮影、スポットクーラーにスタッフ全員が群がる灼熱地獄。気力と体力が削られる猛暑の中、監督、キャスト、スタッフ全員がスクラムを組み、脚本が再現されていく。
すごい作品を作りたいという純粋な情熱が一歩、一歩と前進し、高台まで慎重に妥協せず登っていった。TEAM岡本万太は誰一人諦めることなく、むしろ逆境ほどイキイキとこの荒波の中の航海を楽しんでいるかのようだった。目的は一つ、「すごい作品」を作ること。しかもそれを子供のように無邪気な心と大人の技術で作ること。
そして全110シーンの内、104シーンの撮影を終えた時ついに資金が切れ、完成まで後もう少し最高のクオリティーの作品を観客に届けるため。2023年4月クラウドファンディングに踏み切ることになったのであった。